真っ黒なシャツに高そうなスーツを身につけた
ところを見ると一見その筋の人っぽい。
サングラスが余計いかつく見える分、
やっちゃんさんって本当に夜に溶け込んでそうだ。
ターヤンさんは柄シャツにやっぱり高そうなスーツを
着ていてオールバックの金髪がとにかく輝いていた。
「あ、ごめん。着替えてこようか?」
やっちゃんさんがあたしを見てすぐにリビングから
立ち去ろうとした。
「お仕事だったのに時間を作ってもらって申し訳ありません!」
大人なんだから仕事で忙しくしてても可笑しくない。
「やっ、日和ちゃんが来てくれるのは嬉しいから。」
どんな仕事をしているとか関係ない。
ただ、あたしにはやっぱり極悪人には見えない。
「日和ちゃん?」
リビングを出ていこうとする2人を阻止した。
「カッコイイです。だから、そ、そのままで居て下さい。」
スーツ姿のやっちゃんさんは見たことあった。
追いかけられて助けてもらった時にも見た。
「日和ちゃん、さらっと言っちゃ駄目だよ。」
「おじさん、心臓止まるからね。」
やっちゃんさんとターヤンさんが笑った。
「物怖じしないところとか本当に日和ちゃんは大した
子だよ。普通なら関わっちゃならねえって逃げてくからな。」
ターヤンさんがドカっとソファーに腰を下ろした。
「そんなことないです。ターヤンさんとやっちゃんさん
だから怖くないというのですかね。」
「「(素直過ぎて可愛いなー)」」
やっちゃんさんがフローリングの上に腰を下ろした。
「あ、あわっ、すいません。お高いチョコレートを
献上すべきところを庶民の作ったものでご勘弁を!」
スッと包装されたものを机の上に載せた。
「日和ちゃん、俺たちのこと何だと思ってるのかな?」
ターヤンさんがにっと笑ってテーブルに手を伸ばした。
「日和ちゃんの手作りは上手いって散々聞かされてる
からいつか貰えるかなとは思ってたんだよな。」
「は、はいっ!?」
ターヤンさんが意地悪く笑うのを見て間抜けな
顔を晒しながらも弧を描くような指先を見つめた。

