つ、突っ走てしまった。
エレベーターへの道を歩きながら反省した。
それでも、言ったことには悔いなし。
最近のあたしはどうも衝動的すぎる。
エレベーターを見ると扉が閉まっていて、
先に行ってしまったんだろうなと思った。
あたし、結局思い込みが激しいのかな?
そう思って、上に上がるボタンを押すと、
すぐに扉が開いて驚いた。
「なっ、何で居る!?」
てっきり、呆れて先に行ってるとばかり思った。
あたしのやることを否定はしない。
いつも結局付き合いってくれてる気がする。
「ヒヨリン、聞いちゃった!」
そして、有ろうことか筒抜けだったらしい。
ナル君の可愛らしい笑顔にこれが幻なんじゃ
ないかと思い始めた頃だった。
「日和ちゃん、毎回事あるごとに言ってくれる
だろうからね言うんだけど。」
馨君が優しい声色で優しい笑みを向ける。
「慣れてるからああいうのは気にしなくていい。
それで、日和ちゃんが傷付く方が」
「慣れちゃ駄目だよ!諦めないでって言ったじゃないか!
確かに誤解されやすいかもしれないよ。
それでも、ちゃんと知ってほしいから
何度だって誤解を解くために走る。
そしたら、いつか分かってくれるかもしれない。
実は怖くないんだって気づいてくれるかもしれないでしょ?」
だって、あたしにはちっとも怖い感情なんてない。
それを分かってくれる人が今にきっとたくさん集まるよ。
妥協なんてしていい訳がない。
「そこまで頑張ってくれちゃうんだ?」
「貸しだ。頑張っているのではない!」
伊織君がヘラヘラ笑う中で穏やかな声が耳に届いた。
「ひーちゃん、やってくれるじゃねーか。」
本日もその綺麗なお顔はご健在のようで、
エレベーターの壁に凭れながら漆黒の瞳が
細くなってご機嫌のように見えた。
慣れないその呼び方にはちょっと不信感を
抱きながらもいつもより狭く感じるエレベーター
内は密集密度により潰される。

