Hurly-Burly 5 【完】


つ、突っ走てしまった。

エレベーターへの道を歩きながら反省した。

それでも、言ったことには悔いなし。

最近のあたしはどうも衝動的すぎる。

エレベーターを見ると扉が閉まっていて、

先に行ってしまったんだろうなと思った。

あたし、結局思い込みが激しいのかな?

そう思って、上に上がるボタンを押すと、

すぐに扉が開いて驚いた。

「なっ、何で居る!?」

てっきり、呆れて先に行ってるとばかり思った。

あたしのやることを否定はしない。

いつも結局付き合いってくれてる気がする。

「ヒヨリン、聞いちゃった!」

そして、有ろうことか筒抜けだったらしい。

ナル君の可愛らしい笑顔にこれが幻なんじゃ

ないかと思い始めた頃だった。

「日和ちゃん、毎回事あるごとに言ってくれる

だろうからね言うんだけど。」

馨君が優しい声色で優しい笑みを向ける。

「慣れてるからああいうのは気にしなくていい。

それで、日和ちゃんが傷付く方が」

「慣れちゃ駄目だよ!諦めないでって言ったじゃないか!

確かに誤解されやすいかもしれないよ。

それでも、ちゃんと知ってほしいから

何度だって誤解を解くために走る。

そしたら、いつか分かってくれるかもしれない。

実は怖くないんだって気づいてくれるかもしれないでしょ?」

だって、あたしにはちっとも怖い感情なんてない。

それを分かってくれる人が今にきっとたくさん集まるよ。

妥協なんてしていい訳がない。

「そこまで頑張ってくれちゃうんだ?」

「貸しだ。頑張っているのではない!」

伊織君がヘラヘラ笑う中で穏やかな声が耳に届いた。

「ひーちゃん、やってくれるじゃねーか。」

本日もその綺麗なお顔はご健在のようで、

エレベーターの壁に凭れながら漆黒の瞳が

細くなってご機嫌のように見えた。

慣れないその呼び方にはちょっと不信感を

抱きながらもいつもより狭く感じるエレベーター

内は密集密度により潰される。