Hurly-Burly 5 【完】


ここで、馨君の言うことを聞かなかったその日には

ブラックスマイルの裏顔を拝見するに違いない!

にっこりと微笑むスマイルの下の馨君にお会いしたくない。

コクコク頷くことで馨君はピュアスマイルを持続させた。

「こ、怖っ!」

「何が?」

じ、地獄耳だ!!馨君の笑みが最早脅しだ。

「な、何でもございませんっ!」

「本当に?」

「は、はいいいいいっ!!」

お、怒られるのはご免だよ!

ここは言うこと聞いておくべきだ。

何喋ったか忘れたけど馨君に逆らっちゃイカンよ。

「日和ちゃん本当に分かってくれてるのかな?」

「8割方、馨の脅しで聞いちゃいねえだろ。」

馨君と慶詩の話し声なんて知る由もなかった。

とにかく、身の危険を感じるのみだった。

な、何されるのか分かったもんじゃない。

「も、もしも、約束破ったらどうなるのだろうか?」

「それ、聞いとく?」

またもや、馨君のブラックスマイルに付け加えた

伊織君の妖艶な微笑みに後退する。

後ろにズササっと逃げるように絡まる足を動かす。

な、何故か危機反応を察知した。

「そーだな、体に覚えさせるっきゃないだろ~」

「っひ!!」

伊織君のフェロモン攻撃に尻餅付いた。

「か、体って・・・何、雑用でもさせる気ですか!?」

絶対に、馬車馬のように働けって言うのよ。

それで、疲れ果てたあたしを見て嘲笑う気でいまっせ。

「だから、ひよこのお嬢ちゃんは世間知らずなんだよなー。」

「き、棄却だ!」

そんな、何の労働基準法か分からないものに

承諾した覚えはないからな!

「早く、行くぞ。ちぃーが先に行っちまったじゃん。」

ま、またか!

どうも静か過ぎるような気がしたのよ。

ちぃーさん、今日もすこぶる調子が良さそうですな。

人の会話を無視して進めるそのマイペースさは

健在で本当に姿が見当たらない。