ここで、馨君の言うことを聞かなかったその日には
ブラックスマイルの裏顔を拝見するに違いない!
にっこりと微笑むスマイルの下の馨君にお会いしたくない。
コクコク頷くことで馨君はピュアスマイルを持続させた。
「こ、怖っ!」
「何が?」
じ、地獄耳だ!!馨君の笑みが最早脅しだ。
「な、何でもございませんっ!」
「本当に?」
「は、はいいいいいっ!!」
お、怒られるのはご免だよ!
ここは言うこと聞いておくべきだ。
何喋ったか忘れたけど馨君に逆らっちゃイカンよ。
「日和ちゃん本当に分かってくれてるのかな?」
「8割方、馨の脅しで聞いちゃいねえだろ。」
馨君と慶詩の話し声なんて知る由もなかった。
とにかく、身の危険を感じるのみだった。
な、何されるのか分かったもんじゃない。
「も、もしも、約束破ったらどうなるのだろうか?」
「それ、聞いとく?」
またもや、馨君のブラックスマイルに付け加えた
伊織君の妖艶な微笑みに後退する。
後ろにズササっと逃げるように絡まる足を動かす。
な、何故か危機反応を察知した。
「そーだな、体に覚えさせるっきゃないだろ~」
「っひ!!」
伊織君のフェロモン攻撃に尻餅付いた。
「か、体って・・・何、雑用でもさせる気ですか!?」
絶対に、馬車馬のように働けって言うのよ。
それで、疲れ果てたあたしを見て嘲笑う気でいまっせ。
「だから、ひよこのお嬢ちゃんは世間知らずなんだよなー。」
「き、棄却だ!」
そんな、何の労働基準法か分からないものに
承諾した覚えはないからな!
「早く、行くぞ。ちぃーが先に行っちまったじゃん。」
ま、またか!
どうも静か過ぎるような気がしたのよ。
ちぃーさん、今日もすこぶる調子が良さそうですな。
人の会話を無視して進めるそのマイペースさは
健在で本当に姿が見当たらない。

