廊下を走らずにそれでも素早く移動していると、
「オメェって律儀だよな。」
玄関前で既に待ってるから目ん玉が零れおちそうになった。
聞き覚えのある口悪いこの声は・・・慶詩。
「ま、待てと言ったではないか!」
あたしの言葉を無視しやがったな!
ちゃんと、言ったのに酷いやい。
置いてくつもりなんて・・・確かに返事は
聞かずに片付け行ったけどさ!!
「ヒヨリン、鞄持って来といた。」
ナル君が見覚えのある鞄を掲げる。
「ナル君、エンジェル!!」
「えっ?」
「ナル君、ありがとう!!・・・あ、でも、
奴らはどうしたんだ!?」
確かに、これでやっちゃんさんとターヤンさん
に会いに行けるのは嬉しいけども奴らを野放しに
していいと思ってるのか!?
「日和ちゃん、奴らって・・・中塚が居るから
後は任せてる。」
馨君が困ったように笑ってそう言った。
「中塚さん、絶対に苦労する人生を送りそう!!」
「アイツの腹黒さを知ったらそうは思わねえよ。」
なっ!!
「貴様に言われるとはなんて可哀想なんだ!」
慶詩に言われてるようじゃ中塚さんが不憫だ。
「オメエな、あんなのに騙されんじゃねえよ。」
「な、中塚さんは詐欺師なのか!?」
「それよっか、タチ悪いからな。」
「は、犯罪者だったのか!?」
慶詩がゲラゲラ笑い始めたことによって、
あたしのイメージを作ってた中塚さんの
理想がどんどんと崩れていく。
「ひーちゃん、悪い男に騙されそうだもんなー。」
「伊織君に言われたかないよ!!」
ヘラヘラ悪戯っ子コンビに惑わされてる。
下駄箱からスニーカーを取り出して、
急いで履いてすぐに玄関を出て行く気まぐれな
ボスに続いて団体のように校舎を後にした。
どうも、ちぃ君は今日は眠くないようだ。
普通に歩いてるから幻のように見えるのは
この際気のせいにしておこう。

