それを見た村田が白衣のポケットからペンを
取り出して弄った。
「少し、忠告しといてやんよ。」
茶髪にピアス到底教師になんて見えない相沢は、
笑みを絶やさなかった。
「ひーちゃんのこと好きになるなら無謀だぞ。」
その果てしない脱力感にいち早く反応したのは
ナルで肩をピクリと動かした。
「何言ってんだ?」
無表情のまま、鋭い視線を向ける千治。
顔が整ってるだけあって、その顔はあまりにも
綺麗でそして恐ろしいものである。
「もしもの可能性があんなら早いとこ牽制しとかねえと
止まんないもんだろ?」
まるで、自分がそうだったみたいな口調。
「若気の至りでも何でも・・・今お前らに
ひーちゃんの傍離れられんのは困んだよ。」
村田がペンをクルクルと弄ぶ。
「あ?」
慶詩が目つき悪そうに教師を見下ろす。
「って言っても、ひーちゃんのことだから
とことん鈍感で気づかなそうだけどなー。
実際、アイツのことどう思ってたのかすら
気づいてねえかもしんねえし、敵が居ない
内に早いとこ手を打っておくってのも得策だが、
アイツの存在は大きいからな。」
相沢が髪をクシャりと掻いた。
「“アイツ”って誰だ?」
千治の眉間にシワが寄る。
「気になんのか?まぁ、気になるように
言ってるつもりはあんだけどな。」
口元を上げる教師らしくわぬ担任。
「可笑しいって思わねえの?
ひーちゃん、甘いもの嫌いのくせに
何であんなに作ってっか。」
さも、知ってますよって顔をする相沢。
「相沢、やめとけ。挑発してどうすんだ。」
村田がペンを動かすのをやめた。
「まあな、今までどおりお友達で居てくれりゃ、
何の問題もねえけど。」
茶髪の担任が瞳に影を写した。

