そして、あたしはそんなのに騙されるほど落ちぶれちゃいないぞ。

「ひーちゃん、俺の分は?」

「ないっ!」

「何だよ~、つまらねーな。」

「貴様にやるものなどない!」

「言うねえ?」

何故に、感謝もしてない貴様に苦労して作ったものを

あげねばならないのか説明しろ!

「ヒヨリン、おはよう!!」

玄関で鉢合わせするのは何日ぶりなんだろうか!?

ナル君が朝からキュートに声を掛けてくれた。

それぐらい、この人たちは不定期なご出勤だ。

「おはよー。」

朝からとんでもなく疲れた。

「ひーちゃん、俺の分は?」

「ないって言ってる!」

「そんな即答しちゃう!?」

「しちゃうね!!ないものはないもんね!!

こういうのははっきり言わないとしつこさに

粘り強さが加わちゃうんだもんね!!」

背後からぬっと現れたのは無駄に爽やかな

白衣を纏ったもうひとりの悪魔。

「えー、欲しいなー。ひーちゃんが作るの

大概店で売ってるようなのじゃん。」

「知らんよ!店で買えばいいだろうよ。」

「それじゃ、意味ないだろーが。」

ふてぶてしい面見せてんじゃない!

カチャリと眼鏡を上げる。

「大体、この学校は校則がなんて緩いのかしら!!

普通に考えて教師がこれを見逃していいわけなかろう!」

「それが出来ちゃうのは何でかな?」

「権力の横暴だ!」

「ヤダなー、ひーちゃん、俺はただの一般教師だよ?」

「う、嘘付け!なんて非道なやり方なの!!」

「そんな褒めちゃう?」

ほ、褒めてない!

全然、褒めちゃいねえーぜ。

「戯けっ!!貴様の魂胆は全てお見通しだ!」

「大体、日和にバレンタインもらったこと

ないじゃないあんたたち。」

サユの言葉に大げさなほどのため息を吐かれた。