「居ないよね。」

「ええっ!?」

馨君がボソッと呟いたのを2度聞いた。

「まぁ、職業柄そういうの居たらいろいろ厄介だろ。」

ユウヤが漫画から視線を上げた。

「そうか!組員さんだったことすっかり忘れてた。」

極道の職業はやっちゃんさんとターヤンさんの壁だったとは!

「でも、カッコイイのに勿体ない!何故、厄介になるの?」

そうだよ、別に極道でもいいって言ってくれるいい人

居るかもしれんよ。

「・・・・・危険な職業だから。」

京君が前髪をサラリと払いのける。

「自分たちがそういう世界の人間だと弱みって

いうのを持ってると後々後悔したりするんだよ。」

「そうかな?それでも、一緒に頑張ろうって

言ってくれる人が居ても可笑しくないと思うよ。」

2人ともいい人だから早く幸せになれるといいのにな。

「みんながみんな日和ちゃんみたいな考え方でもないんだよ。」

「だとしたら、もしみんなが極道を職業に将来働く

ことになったらあたしは女ではあるけど弱みにしないでね!

むしろ、強みですと主張してやろう!!」

「何だよ、それ~」

「友達ポジションは絶対に譲らないんだ!」

伊織君はさ、女の子に困ってなさそうだよね。

きっと、バレンタインだって山のほど貰ってそう。

「そう言えば、あたしがあげなくともみんなは

モテそうだし貰えるのではないか?」

「ヒヨリンは俺たちがそういう世界に入っても

仲良くしてくれるの?」

ナル君が不安そうな顔をしながら見つめてきた。

「もちろん!いつまでもお友達です!!

飽きてしまってもへばりつきますから。」

「危ない目にあうかもしれなくても?」

「あたしに勝るものなどありません!」

ナル君の潤んだ瞳が一瞬にして弾ける

ような笑みに変わった。

「だって、そういう人だからって友達に

なったわけじゃないもの。」

不良だからお友達になりましょうなんて言った覚えはない。