授業が終わり、それぞれ教室を出て行く。


なんとなく帰る気分にならなくて、屋上に行った。


ベンチに座って、適当に文庫本を取り出す。


だが私は本を開かず、空を見上げた。


廊下を渡る途中の事を思い出す。




-『あ…、
あれって天王洲さんじゃない?』

-『あぁ…C組の……。』

-『相変わらず暗いよねぇ…。
色は派手な癖に。』

-『相変わらず、何考えてるか分かんないし……気味が悪いのよ。』

-『あの白い見た目とか……ホント、“雪女”みたいで不気味よねぇ。』


-『天王洲ってさ……なんか壁あるよなぁ…。』

-『分かる分かる。あんましゃべんねーし、笑わないし……やりにくいよなぁ。』

-『先生達も、近寄りづらいってボヤいてたしな。』

-『いっつも本読んでるだけだし。
…あいつ、学校にいる意味あんの?』

-『本読んでるだけなら、どっか行けっての。
…………“雪女”が。』




……そりゃ、ロクな目に遭い続けてりゃグレるよなぁ……。


特殊な家に生まれたのを除いても………私は決して普通ではなかった。



腰までの銀色の髪。


雪のような白い肌。


色素の薄いブラウン色の目。



私はドイツ人の祖母の血が流れているクォーターで、この見た目は祖母の血を強く受け継いだ影響らしい。


現に、家族の中でも特に私は日本人離れしていた。



加えて、私は引退するまで陰陽師として生きてきた。



陰陽師として理不尽な目に遭い続けている内に、ひねくれ者になっていった。



感覚も、普通の人間よりかなりズレているのも自覚している。



この最悪な性格と白っぽい見た目から、周りから『天校の雪女』という異名がついた。