「……っ、
……………違うっ!!」


「………!?」



急に頭を抱えこみ叫び出した私に、男は驚いたように目を見開いた。




「違う……っ!!
そんな、訳が………!!」


「ど……、
どうされた………!?」



私の混乱に、男がおろおろする。



やめろ………!



思い出すな!!
思い出しちゃいけない!!



……忘れなきゃ………いけない………!!



そんな想いとは裏腹に、どんどん記憶が浮かび上がる。



『あの時』の、感情も………。




「違う……、
……違う……っ!!」


私の悲痛な嘆きに、男は何も出来ない。



心が、押しつぶされるような感覚が襲ってくる。



イヤだ……!


イヤだイヤだイヤだ……!!




「そんな訳………っ、




そんな訳ないんだ………!!」




耐えられなくなって、男に構わずに走り去る。



さっきの男が何か言ってたような気がしたが、それ所じゃなかった。




一秒でも……
あの男から、離れたかった。



どこに行くかなんて、決まってない。




あのまま『あの時』の幻影に捕らわれたくなくて、




ただがむしゃらに、走った。