荒れた大地



燃え上がる炎



空へと昇っていく黒煙



ざわめく海



天変地異でも起こったような惨状の中で



私は、いた。




何故か私は袴姿で、息を切らして暗闇の中ただひたすら走る。



やがて湖の近くまで辿り着き、私は立ち止まり息を整える。


血が流れる右腕を抑え、ひと息つくのも束の間、




---身体中に、衝撃が走った。



気づいたら、私はもう手遅れで


成す術もなく、倒れる。


『ここまで……、なのか………っ!』

激痛と傷口の熱に堪える中、虚しさや後悔に苛まれる。



『-----!!』


意識が薄れる中、誰かが私の名を叫ぶ。



『----!
-------!!』



その人は私を抱き起こし、必死に私を呼びかける。


その腕は、泣きたくなる程に温かくて。


顔はよく見えないけど、泣いている。


私のために……。



その事実だけで、私の心は暖かい気持ちで満たされた。


先程のドロドロした想いは、もうどこにもない。



この腕の中にいる幸せと


きっと、もう会えないだろうと悟る悲しみ………



そんなやるせない想いを抱え、一筋の涙を流す。



自分の最後の力を振り絞って、愛しいこの人の頬に手を伸ばし、



名前を呼んだ。



-この想いだけは、伝えたい-






『--幸せ、だった……。






愛してる---。』





最後の言葉を言い終えた直後、力を失い、意識を絶った。



『-----!?
------!!』


男は力尽きた私を再び呼びかけ、必死に揺する。



冷たくなる私の身体。



閉じられたまま開かれない、私の瞳。



そう、私は




---命を、絶った。