家人裁(かじんさい)





はい、息子に医者になるよう言いました。

医者は人助けが仕事です。本当に人を助けられるのは医者だけだ。
いや、今回初めて実感したのですが、弁護士も医者に匹敵しますな。
弁護士は社会的な意味あいの命を救うのですから。
今の私を護ってくれるのは法律だけだ。

それにしても、大学は金がかかるのに、就職しようとしたって氷河期です。その点、医者や弁護士は不況知らずですね。

一番上が出来損ないで、大学を出してやったのにろくな仕事も得ず、親不幸なやつでした。
数年前に女房が病気で亡くなりましたが、あいつさえ立派な仕事に就いていたなら、妻に高度医療を受けさせてやれた。いのちを救えたのです、
だから妻を殺したのはあいつですね。

とにかく私は、息子には間違いない道を歩ませるつもりです。
他人も家族も助けられる人間にしたいんです。
幸せっていうのは、そういう人間が掴むんだ。

親不幸者が幸せになれるわけがないんですよ。
だからあいつはあんな目に遭った、自業自得ですよ、天罰です、私とは関係ないことだ。