家人裁(かじんさい)




現場に最初に着いたのはあなたともう1人の隊員ですね。

2階にキッチンがあり、コンロの前で、顔面に火傷を負った少女、木内真麻さん七歳が倒れていた、間違いないですか。
真麻さんの近くにはチャッカマンという、大きめのライターのような物が落ちていた、そうですね。

真麻さんは胸から上に水を掛けられた状態だった。
あなたはすぐに容態を確認、真麻さんの気道は焼かれて重篤な状態だった。

すぐに救急搬送を行い、車中にて事故の詳しい状況を、被害者の叔母にあたる佐伯絵美さんに尋ねたが、目を離していたので分からない、との答えだった。

さて、あなたは、こうした状況から、その時点で本件を事故と考えましたか、事件だと思いましたか。

つまり、現場での処置中は事故と考え、不審な点は無かったかということをお尋ねしています。

ああ、それは、そうです、最終的な判断をするのは警察の仕事ですが、私は、救急隊員のあなたの見解を聞いているのです。

本件は、事故の可能性が高いかどうかを。

分かりました、裁判員のみなさん、私からは以上です。