黙って頷く私に、ジェイドは目を細めた。


「それでも、エルガがくれた名前だけは、ずっと覚えてる。あなたに呼ばれたとき、驚いたわ。もう何年も呼ばれていなかったのに、すぐ耳に入ってきた」


私が『ファナ』と呼んだとき、彼女はすぐに反応した。

『ジェイド』である彼女が、『ファナ』だった自分を覚えていたということだ。


「…本当に、ありがとう。私を見つけてくれて、ありがとう…」


ジェイドは何度も何度も、頭を下げた。

私も、何度も礼を言った。

ルトはジェイドを見つめ、そして私と目が合うと、柔らかく笑った。

どこか人を安心させる、明るい笑顔だった。



「…では、私はこれで」

慌てて依頼所を出てきてしまったから、仕事の後片付けなどがまだ残っている。

立ち去ろうとすると、ジェイドに「待って」と呼び止められた。