フェイク

「ね、初恋で相手を振るってのもなかなか珍しいよね」


亜也乃が私の顔を見て、ふと思い付いたように言った。


「そう?」


「うん。

初めて聞いたよ、そんなの。


でもなんか、理緒らしいかも」


と言って、亜也乃はもう一度笑った。



それからまた、私たちは黙ってチョコレートムースやフィナンシェやクッキーを食べ、紅茶をおかわりした。



外の若葉で濾したような澄んだ風が

開け放たれた窓から、さあっと吹き込んで来た。



そんな、穏やかで寛いだ午後だった。