フェイク

確かに、見たところ翼さんの足取りはしっかりしている。


ほろ酔い、という程度なのだろう。



「理緒さんは?」


ワインのせいか、いつもより少しかすれて熱を帯びたような声で、翼さんが訊いた。



「私ですか?

全然大丈夫です、酔ってません」



私は翼さんに心配を掛けまいと、しっかりした口調で答える。


「……そうですか」



あ、もしかして。


「酔っちゃった……」って翼さんにしなだれ掛かるべきタイミングって、そこだったんだろうか。