彼は俺の話を静かに頷きながらひと通り聞いた後、
ゆっくりと息を吐いて言った。
「うん…。
難しいことは僕はよくわからないけれど。
でもあまり深く考えることはないよ」
そしてやさしい眼差しで俺を見て、
こう続けた。
「……君はもう一度、
ここに来ることがある。
そのときは今の心境からきっと脱していると思うよ。
そしてたぶん、
僕も君に感謝すると思う」
言っている意味がわからなかった。
どうすればこの思いから逃れることができるというんだ?
ずっと迷宮の中、
出口も進む道さえも見えないのに。
「あの、」
どうしてそんなこと言うのか、
聞こうとしたけれど、
男性はにっこりと笑って、
そして
すうっと消えて行った。

