それでも、本城くんを好きだってこと、絶対に知られるわけにはいかない。
「もしかして本城くんだったり?」
「違うよ!」
「えー、ほんと?」
「ほんとほんと!」
誰にも知られたくない。できれば本城くんにだって。
本当は、ほかの誰かなんて関係なくて、本城くんにだけはこの気持ちを知られたくないと思っているのかも。でも、もうあまりに苦しくて、いっそ言ってしまいたくなる瞬間もあって。
分からないや。どうしたいのかも、どうするべきなのかも。
分からない。
この気持ちの終着点が、わたしには、いっこうに見えない。
「――安西ちゃん!?」
「へっ?」
「筆! 先っちょ! ぽたぽた垂れてる! スカート!」
「う、うわああああ!!」
最悪だ。気付いたときにはもう遅かった。紺色のスカートに、いくつもの真っ白な点が落ちていた。
「き、着替え、着替えをっ」
「の前にとりあえずタオル!」
「え、あ、えっ」
「いいから拭かないと! 落ち着け!」
落ち着けません。
突然の騒ぎにクラス中の視線がこちらに集まる。そういえば新学期の委員会決めのとき以来だ、こんなに注目を集めるのは。
あのときと同じだった。本城くんもわたしをしっかり見ていて、目が合うと、彼はきょうもちょっと笑った。また笑われた。消えたい。



