保体委員会は3年7組の教室だった。わたしたちは3組だから、近いといえばわりかし近い。
ただ、その道のりは長かったように思う。ううん。とっても短かったような気もする。
本当のことを言うと、心も身体もどうしようもなくふわふわしていて、本城くんについていくので精いっぱいだったんだ。情けないけれど。
教室に到着すると、クラスごとに男女隣どうしで座らされた。つまり、いま本城くんはわたしの左側に座っているというわけで。
心臓が口から出そう。いまなら本当に出せる気がする。
身体中がどくどくしている。顔が火照る。どうしようもなく熱い。
それなのに指先だけが妙に冷たくて、変な感じだ。
「……あのさ。もしかして、俺のことこわい?」
「へっ!?」
「安西さん、ずっとびくびくしてるからさ。目つき悪いってよく言われるし、もしかしてこわがられてんのかなーと思って」
いいえ! むしろあなたのことが大好きなんです!
……とは、さすがに言えない。言えたら楽なんだろうけど。
声を出す代わりにぶんぶん首を横に振るわたしに、彼は少し首をかしげて、小さく笑った。
「自分で言うのもアレだけど、たぶん俺、見た目ほどこわくないよ」
「み、見た目もこわくないですよ!!」
「あはは、敬語! 安西さんって面白いよな。こないだもおもいっきり机に頭ぶつけてたろ」
「……いや……あれは、事故で……」
笑っている。本城くんが、わたしに笑いかけてくれている。
くしゃっとなる目元と、口元からのぞく八重歯がかわいくって、思わず両手をぎゅっと握りしめた。いま握力を緩めたら教室ごと爆発する気がした。
……どうしよう。わたし、もしかしたら、あした死ぬのかも。



