わらって、すきっていって。



なにを着ていけばいいのか、人生においてこんなに悩んだことはないと思う。

できるだけお洒落をしていきたい。でもライブだし動きやすいほうがいいよね。ていうかそもそも、本城くんは女の子のどういう服装が好きなんだろう?

ライブの約束をした日から毎日悩みぬいて、そのくせ当日まで決まらなかったので、結局えっちゃんに泣きついてしまった。


彼女は心から面白がっていた。なにか進展あったら教えてね、なんて、電話の向こうですごく笑っていた。

でも同じくらい喜んでくれたのも事実で。まるで自分のことのようにはしゃいでいるので、やっぱりわたしはえっちゃんが大好きだと思った。


そしていざライブへ。待ち合わせ場所には、もうすでに彼がいた。


「――ごめん! 待ったよね、ごめんね」

「大丈夫、俺もいま来たとこだし。それに待ち合わせ時間まであと10分もある」

「わ、ほんとだ……!」

「あはは、ふたりともそわそわしてんのかな」


わたしがそわそわしている理由はまた別にあるのだけれど、それは黙っておこう。

それにしても、はじめて見た本城くんの私服はあまりにスマートにキマりすぎていて、隣を歩くのが少し恥ずかしい。やっぱりスタイルがいいのは正義だよ、本城くん。なにをしたらそんなに脚が長くなるのですか。

わたしなんか、寸胴だし短足だし、本当に嫌になる。おまけにTシャツに短パンなんていう男子小学生みたいな服装だから、きっとそれが際立っているに違いないんだろうなあ。