◇
あまいたまごやきのCDはすぐにスマホに入れた。いままで通学のときに音楽なんて聴かなかったくせに、翌日から突然イヤホンを装備しているなんて、自分でもあまりに単純だと思う。
それにしてもさわやかで素敵なメロディーだなあ。
じりじり照りつける初夏の太陽を見上げて、鼓膜を揺らす音楽に耳を傾けながら、手のひらをかざした。
「――さん! 安西さんっ」
「えっ? は、はい!」
突然、肩を軽く叩かれる。振り返ると、そこには本日も最高にまぶしい微笑みがあって、気絶しそうになった。
本城くんだ!
驚いた。こうして登校中に会うことなんていままでに一度だってなかったのに。
「おはよう」
「お、おはようっ」
「ごめん、もしかしてびっくりさせた? 安西さんだーと思ったらなんとなく声かけずにはいられなかった」
なんてこと!
舞い上がってしまうから、そういうことを軽々しく口にするのはどうかかんべん願いたいです。心臓がばくばく暴れて息が苦しいよ。
「あ……ええと、きょうはちょっと遅いんだね? 朝練は?」
「ああ、うん。きょうは休み。コーチが『ちょっとは休め』ってうるさくてさあ。大切な大会控えてんのに」
「そうなんだ。毎日がんばってるもんね、朝も放課後も」
「そんなことねーよ、全然。俺なんてまだまだっす」
嘘だ。これは謙遜ってやつだ。
だってわたしがいちばんよく知っている。本城くんが毎日、とっても一生懸命に走っていること。
あまいたまごやきのCDはすぐにスマホに入れた。いままで通学のときに音楽なんて聴かなかったくせに、翌日から突然イヤホンを装備しているなんて、自分でもあまりに単純だと思う。
それにしてもさわやかで素敵なメロディーだなあ。
じりじり照りつける初夏の太陽を見上げて、鼓膜を揺らす音楽に耳を傾けながら、手のひらをかざした。
「――さん! 安西さんっ」
「えっ? は、はい!」
突然、肩を軽く叩かれる。振り返ると、そこには本日も最高にまぶしい微笑みがあって、気絶しそうになった。
本城くんだ!
驚いた。こうして登校中に会うことなんていままでに一度だってなかったのに。
「おはよう」
「お、おはようっ」
「ごめん、もしかしてびっくりさせた? 安西さんだーと思ったらなんとなく声かけずにはいられなかった」
なんてこと!
舞い上がってしまうから、そういうことを軽々しく口にするのはどうかかんべん願いたいです。心臓がばくばく暴れて息が苦しいよ。
「あ……ええと、きょうはちょっと遅いんだね? 朝練は?」
「ああ、うん。きょうは休み。コーチが『ちょっとは休め』ってうるさくてさあ。大切な大会控えてんのに」
「そうなんだ。毎日がんばってるもんね、朝も放課後も」
「そんなことねーよ、全然。俺なんてまだまだっす」
嘘だ。これは謙遜ってやつだ。
だってわたしがいちばんよく知っている。本城くんが毎日、とっても一生懸命に走っていること。



