よくできた小さなあんみつ。その隣には、あのぶさいくなふてぶてしいネコが、背中を丸めて寄り添っていた。


「……あっ、もしかしてマジで寒い? いらなかった? だったらただちに回収……」


手のひらを見つめたまま動かないわたしに、本城くんが心配そうな声を出す。

そんなバカな、回収なんかされてたまるものですか。

だってこれは……これは、まぎれもなく、本城くんがわたしのために選んでくれたもの。


「た、大切に! 大切にするっ!」

「え?」

「その……びっくりして。でも、『あんみつ』、すっごくうれしい」


すっごく、すっごくうれしい。

うれしいなんて形容詞じゃとうてい追いつきっこない。胸が熱い。のどが、瞳が、身体中が、熱くてたまらない。

でも、この熱になら焼かれて死んでしまってもいいと思った。


「本城くん、ありがとう。一生大切にするね」


声は震えていなかっただろうか。

無意識に、胸の前でストラップをぎゅっと抱きしめる。ものすごいパワーが身体に入ってくるような気がして、本城くんってやっぱりすごいひとだなって思った。


「……な、んか」


空気を短く切ったようにこぼれた声は、わたしのじゃない。

見上げると、このパワーをくれたそのひとは右手で顔を覆って、その表情を隠していた。


「そんなに喜んでもらえると思ってなかったし……なんか俺がいまさら恥ずかしんだけど」

「へ……」

「いや、喜んでもらえてよかった、……っす」


ずるりと口元まで降りてきた右の手のひら。その向こう側には、顔を赤らめて目を逸らす、世界でいちばん好きなひとがいた。