「ほ、本城くんも素敵だよね!」
「ん?」
「夏生ってすごくいい名前だなあって……自己紹介のときから思ってたんだ」
もし彼がほかの名前だったとしても、わたしはきっとすごく素敵だと思っていたんだろうけど。でも、夏生って、本城くんにぴったりな名前。
「そうかな。女みたいで昔はすげー嫌だったよ。夏生まれだから夏生って、テキトーもいいところ」
そう言いながらも、見せるのはとてもさわやかな笑顔。
たしかにこのさわやかさは夏生まれならではかもしれないなって、妙に納得した。
「な、夏生まれなんだね!」
「うん。8月6日生まれ」
よし、心のスケジュール帳にばっちり書きこみました。帰ったらすぐにスマホにメモしよう。こっそり。
「安西さんはなんとなく冬生まれっぽい」
「11月30日だよ。冬かな?」
「うーん。冬だな。いや、ぎりぎり秋?」
どっちでもいい。本城くんが冬って言うなら冬だし、秋って言うなら秋です。
ふと彼の手元を見ると、素早くスマホをタップして、なにやらぽちぽち書きこんでいた。そしてすぐに顔を上げたかと思えば、やっぱりちょっと首をかしげながら、うれしそうに笑った。
「ばっちりメモした」
「メモ?」
「11月30日、安西さんの誕生日」
そんなバカな。
ずいっと差し出された液晶には、今年の11月のカレンダーが表示されていた。30日のところにケーキのマークがあった。
それだけじゃない。
そこには間違いなく『安西さんの誕生日』って書いてあるんだから、まばたきするのを忘れてしまう。



