「いつからとか、そんなのどうでもいいよ。いま俺が安西さんを好きなことに変わりはないだろ」


本城くんがかっこいいことを言った。

間違えた。本城くんはいつでも、どこでも、最強にかっこいいんだった。忘れていた。

でも、なんとなく、これってうまいことはぐらかされたような気がする。


わたしはやっぱり、いつでもこのひとに負けっぱなしだ。

春の陽の下、優しい光を浴びる本城くんを見上げながら、どうしようもない愛おしさがこみ上げた。

――好き。大好き。

このどうにも大きすぎる気持ちを、これからは、どれだけでも伝えられるんだなあ。きっと本城くんは全部受け止めてくれる。それってすごく、幸せなことだ。


「……本城くん」

「はい」

「好きです」

「うん」

「実は、1年生の夏からずっと好きでした」

「あはは、うん」


よかった。今度は泣かずに言えた。何度目かの告白にしてようやく目標達成だ。

ほっと胸をなでおろしていると、ふいに本城くんが息を吐いた。驚いて顔を上げると、目が合って、彼が目を細めて首をかしげる。彼は微笑んでくれている。


「……やっと、笑って言ってくれた」

「え?」

「安西さんいつも泣いてたから。ずっと、笑って、好きって言ってほしいと思ってた。だからうれしい。すげーうれしい」


ああよかった、なんて。自分だけ満足そうに言うんだから、なんだかなあ。やっぱり本城くんって、ちょっといじわるなひとなのかもしれない。


「ほ、本城くん、もっ!」

「ん?」

「あのね。本城くんも、……ねえ、笑って、好きって言って?」


本城くんの切れ長の目がまんまるに開く。わたしを見ていたふたつの瞳は少しばつが悪そうにきょろきょろと動いて、それからちょっと照れたみたいに下を向いて、やがてこっちに戻ってきた。


「――好きだよ。たぶん、安西さんが思うより、もうずっと前から」


まっすぐな言葉をくれた彼の口元からは、白い、さんかくの八重歯がのぞいていた。