でも本城くんは笑っていた。わたしもつられて笑った。

こんなに幸せな瞬間、世界のどこを探しても、きっと見つからないと思う。


「……そういえば、ちなみになんだけど」

「は、はいっ」

「さっき、はじめて見たときから俺のこと好きだったって言ってくれたろ。それっていつだった? 3年に上がってから?」

「え! そ、それはべつにいいんじゃないかなあ……」


だって、本当のことを言ったらきっと引かれてしまう。1年生の夏からだなんて、うん。やっぱり言えないよ。一目惚れっていうだけでもじゅうぶん引かれる要因だと思うのに。


「なあ、いつ?」


それでも本城くんはあきらめない。

悔しいなあ。少しかがんでわたしの顔を覗きこんでくるその優しい瞳に、わたしが勝てるはずないのに。


「その……あれは1年生の夏ごろでしたでしょうか……」

「え、マジ、そんな前から? 嘘だろ?」

「本当だよ……ひ、引かないで……」


すぐ傍にある彼の顔は驚きを隠せないでいた。まじまじとわたしの顔を見つめている。

ああ、これは早速引かれているのかな。でも本城くんは笑った。「それなら俺のほうが早い」なんて言いながら。


「え、どういう……」

「たぶんな、俺のほうが先に安西さんを好きだった」

「え!? 嘘でしょ!? わたし1年生の夏からだよ!?」

「うん。だったら絶対に俺のほうが早いよ」


嘘だ。そんなことがあるわけない。だってわたしたち、3年生に上がってはじめて、同じクラスになったわけで。

それまでに接点なんてあったっけ。……いや、なかった、絶対に。


「じゃ、じゃあ……本城くんはいったいいつから……」

「それは言わねーよ。恥ずかしいじゃん」

「それはちょっとずるいんじゃないかなあ!?」


本城くんって、思っていたよりもちょっといじわるなひとだ。「やだよ」なんてさわやかに笑っている顔を見て、そう思った。

でも、それすら好きだなって思ってしまうんだから、わたしは本城くんにすっかり盲目なんだ。