わらって、すきっていって。


でも、そっか。なっちゃんも、小町ちゃんも。私と同じに、恋をしているんだ。

そうだよ。みんな同じ。なっちゃんだって、小町ちゃんだって、悩んで苦しんで、泣きながらどうしようもない痛みと闘っているのかもしれない。

そして、ふたりの痛みの原因は、ほかでもない私なのかもしれない。


なっちゃんが私のものになればいいのにと思っていたのはもちろん本当だ。でも、同じくらい、彼には幸せになってほしいと思っていた。それは私の隣じゃなくてもいい、とも。

なっちゃんは、なっちゃんの好きなひとの隣で、笑っていてほしい。

いつも心のなかでは正反対の気持ちが混ざりあって、ぐちゃぐちゃで、どうしようもなく、苦しかった。


目の前にいる好きなひとを見つめた。すると、彼もその視線に気づいて、答えるように私を見つめ返してきた。


「ねえ、なっちゃん。なっちゃんが責任を感じることなんてさ、ひとつもないんだよ」


それはずっと言いたくて、でも、どうしても言えずにいたことだ。


「あの日、勝手に飛び出したのは美夜なんだし。ていうかそもそも、信号無視したトラックが悪いんだしー。だからなっちゃんが責任を感じることなんてなにもないの! 分かる?」

「でも」

「『でも』じゃない! ……ごめんね。ホントはあの日からずっと、美夜、そう思ってたんだ。でもなっちゃんが優しかったから……。美夜ね、なっちゃんのことが欲しくてたまらなかったから、ずっと、言えなかった」


かたく結んでいたこぶしをほどいた。大きな手のひらを握ると、もう一度、その温もりは私をつかまえてくれた。


「それにね、美夜、後悔してないよ。なっちゃんの走ってる姿が大好きだから、それを見れないほうがきっとつらかったもん。

……美夜ね、なっちゃんのこと、大好きなんだよ。子どものころからずっと、大好き」


そういえば、こうしてきちんと告白するのってはじめてだ。私たちのあいだにはいろいろなものがありすぎていて、素直に自分の気持ちを伝えることなんてすっかり忘れていた。

ああ、はじめからこうすればよかったのかな。

なっちゃんのこと、理由をつけて縛りつけていたけれど。好きだ、って。ちゃんと素直にそうぶつけていたら、なにか変わっていたのかもしれない。