きっと小町ちゃんもなっちゃんを好きだと思う。こないだ一緒にパンケーキを食べたときに確信した。
ふたりは両想いだ。
私さえいなかったら、なんの問題も、障害もなく、なっちゃんと小町ちゃんは恋人どうしになれていたはずなんだ。
でも、ダメなの。それじゃ、私が、ダメなの。
「なっちゃんがいなくなったら、美夜、どうしたらいい? どうやって生きていけばいいの?
美夜のこと好きじゃなくていいから、だから、なっちゃん……ずっと、美夜の傍にいてよおっ……」
ぽたぽた、ぽたぽた。恥ずかしいくらいとめどなくこぼれる涙が私の手を濡らしていく。
ぎゅっとこぶしを作った。このどろどろした感情をどこにぶつけたらいいのか分からなくて、力いっぱい握ると、のばしている爪が手のひらに食いこんで痛かった。
「……美夜、ごめん」
涙でびしょびしょに濡れた手を、別のあたたかいものがそっと包みこむ。なっちゃんの手だ。大きくて優しい、なっちゃんの手のひらは、きょうもじんわりとあたたかい。
あたたかすぎて、もっと涙が出るよ。
「綺麗事は言わない。美夜の言った通り、俺は安西さんのことが好きだ。だからもう傍にいてやれない。こんな気持ちのまま、美夜と一生一緒にいるなんて、できない。……俺のためにも、美夜のためにも」
「やだ、なっちゃん……やだよおっ……」
美夜と結婚するって言ったくせに。泣いて約束してくれたくせに。
聞いてないよ。ほかに好きな子ができたらそれは無効になるだなんて。私、聞いてない。
勝手だよ、なっちゃん。
「やだよお……」
でも、いつかこんな日がくるってことは、いつもどこかで覚悟していた。



