わらって、すきっていって。


グレープソーダを飲み終わったらしいちーくんが、わざとらしくズコッと音を立てた。彼はふてぶてしくグラスを置いて、それからえっちゃんをじいっと見る。


「荻野って本城のことねらってんのかよ?」

「だったらなによ?」

「やめとけやめとけ。おまえみてーなガサツな女、本城には似合わねえって」

「霧島さあ、いくらあたしのこと大好きだからって、やきもち妬くのやめてよね」

「バッ……、ちっげえよ! どうしたらそんな勘違いできんだ!!」


でも、なんとなく、ちーくんはえっちゃんのことが好きなんじゃないかって思う。根拠は特にないけれど。

ちーくんは昔からとっても不器用だから、いつもこんな感じでえっちゃんと言い合いをしてばかりで、どちらかというといじわるで。こんなだといつまでたっても発展しないと思うんだけどな。


「……まあでも、たしかにね。あたしよりかはあんこのほうが、本城とはお似合いかもねえ」

「えっ!?」


今度こそオレンジジュースを本城くんの顔面に噴射するかと思った。


「ね、本城もそう思わない?」


「――ぜってーダメだかんなっ!!」


本城くんが口を開きかけた、そのとき。ちーくんが大きな声を出して立ち上がったので、その答えは聞かずに済んだ。

いや、本当はちょっと聞きたかった気もする。本城くんの答え。

でもやっぱり、もしここで「安西さんはタイプじゃない」とかなんとか言われてしまったら、もうこの場で死んでしまうような気がするし、やっぱりよかった。

ちーくん、ありがとう。勝手に。