悔しいよ。たぶん、死ぬほど。
あんこに好きになってもらえるってだけでも腹が立つのに、それを振るだなんて、本城にはもれなく地獄に落ちてもらいたい。その理由がなんであれ、むしろオレが地獄に落とす。
正直、それくらいむかついていると思う、いま。
だって、両想いだと思っていたんだ。
ふたりのあいだには、なんつーか、そういうオーラがダダ漏れで。オレの入る隙なんて微塵もないって思っていた。
だから、見守ろうって。応援してやろうって、結構本気で思っていたのに。
なんつーか。ぶっちゃけ、本城の気持ちとか事情とか、もうどうでもいいや。
あんこを振った。そんで、泣かせた。その事実がある以上、オレは怒ったっていいよな。
そうだよな。怒っていいんだよ、オレ。だってむかつくもん。
「……あんこには、荻野がいるから大丈夫だと思う」
「英梨子ちゃんだっけ。あのスレンダーな美人ちゃんだろ?」
「そーそ。たぶんあんこも荻野のほうが話せるだろうし、泣けるだろうからさ。あんこはあいつに任せる」
「えー。ちーちゃん、いますっげーチャンスなのに。もったいねー」
「いいんだよオレは。そういうのはオレの仕事じゃねえの」
うまく言えないけれど。たぶん、いまあんこの隣にいてやるべきなのはオレじゃないって、なんとなく思う。
それに、いまオレがどれだけ優しくしたとしても、きっとあいつはオレに振り向いてはくれないから。分かるんだよ。だって、18年間もあいつを見てきたんだ。
「……兄貴、ありがとーな。今度アイスおごるわ」
「えっ、スマブラは!?」
「わりいけどきょうはもう寝る」
「せっかくセットしたのに……ちーちゃん冷たい……」
いつまでもぶつぶつ言っている兄貴の部屋を、どこかすっきりした気持ちで出た。
兄貴はうぜえし時々キモイけど、やっぱりすげーなって、きょうも思ってしまった。悔しい。



