「会いに行けば?」
兄貴が、バイオハザードのソフトをPS4から取り出しながら、なんとなしにそう言った。
なんだよ、自分は続きやんねえの。ほんとにオレにクリアしてもらいたかっただけかよ。
「小町の家そこだし、いまからでも会いに行って、話聞いて、泣かせてやったらいいじゃん」
「……そんなの、無理だろ。傷えぐるだけ……」
「えぐってやりゃあいいんだよ。そんで、もういいってくらい優しくしてやれ。おまえは恋愛経験ゼロの童貞だから分かんねえかもだけど、失恋して弱ってる女ほど落としやすい生き物は無いんだぞ?」
言ってくれたな、おい。それが悩んでいる弟にかける言葉か。
でも、いろいろと図星で反論できないでいると、次に兄貴はせっせとWiiを用意し始めた。
「それか、小町のこと振った男と話つけてこい」
「話って?」
「小町のなにが気に入らねえのか聞くんだよ。んで、その答えによっちゃ殴ってやればいい」
「い、いやいやいやいや」
頭ぶっ飛んでんのかな。つか、うちの兄貴、いままでそんなハードな恋愛してきたのか。
それでも、兄貴の顔は真剣そのものだった。スマブラをセットするなり、こっちに向き直ると、まっすぐオレを見つめて口を開く。
「だって、千尋にはそうする権利があるだろ? ガキのころからずっと小町のことが好きで、あいつを守ってきたのは、おまえなんだから」
悔しくないのかよ、と。最後にそう言われたとき、まるで頭をハンマーで殴られたみたいに、はっとした。



