クリアできた。隣で黙りこんでいる兄貴にぽいっとコントローラーを投げると、ヤツは整った顔をわざとらしくしゅんとさせていて、腹が立つ。
「おい。やんねーの、続き」
「べつに、振ったわけじゃねえもん、おれ」
「……分かってるよ。悪かった」
「小町は千尋と同じっつうか、妹みたいなもんなんだよ。それに歳だって6つも離れてるし……なあ、分かるだろ?」
「分かってる。もういいよ、ごめん」
分かるよ、いまなら、オレにだって。あのとき兄貴の気持ち。
でも、オレは当時からあんこのことがどうしようもなく好きで、そんな彼女に好かれている兄貴が、なのにその気持ちに応えてやらない兄貴が、どうしても許せなかった。
オレには振り向いてくれないのに、なんなんだよって。
それが小学校低学年のころの話。あのとき兄貴は中学生だったわけだし、よく考えたら当たり前のことなんだろうけどさ。
でも、どうしたって、思い出すとやっぱりむかつく。
むかつくもんはむかつく。
「……オレ、かっこわりいな」
「なんで」
「こんなにあんこのこと好きなのに、いつもなんもできねえし。きょうだって、あいつ泣いてたのに、気の利いた言葉すらかけてやれなかった」
それなのに、兄貴や本城にはいっちょまえに腹を立てて。
かっこわりいよ。そりゃ、あんこだって、こんなやつ好きになったりしねえよ。



