昔から、こうやって兄弟肩を並べてコントローラーをぴこぴこするのは、霧島家ではめずらしい光景じゃない。特にオレが部活を引退してからは。
「……千尋、なんかあったろ」
兄貴は、うぜえし、時々キモイ。でもやっぱり敵わねえなって思うのは、こんなときだ。
ひとが一生懸命ゾンビを倒しまくっている真っ只中に、よくもまあそんなトーンで、そんなことが言えるよな。
「ついに小町に振られた?」
「なっ……!」
死んだ。死んだじゃねえか、この野郎。せっかくもう少しでクリアできそうだったのに。
ふざけんなよ、おい。
「あっはっは、図星だ!」
「ち、ちげーから! マジでちげーからな、おい、ふざけんな!」
からからと笑う兄貴に、結構本気で殺意が湧いた。
「……ちげえよ。逆。あんこが、振られた。らしい」
「え!? 誰に!?」
「好きなやつだよ。決まってんだろ」
「待って!? お兄ちゃんそんな話聞いてないんだけど!?」
そりゃまあ、言ってないしな。言わねえよ、いちいち。オレももう高校生なんだから、放っとけよ。
黙ってコンティニューを押した。とたん、わらわらこっちに向かってくるゾンビを、普段の5倍くらいの憎しみをこめて撃ちまくった。



