我が兄は、ドアの隙間からPS4のコントローラーをちょろちょろと見せては、少年のようにうれしそうに笑っている。
いいのかな、24にもなる大人の男が、こんなんで。気の抜けた顔面は本当にやめてほしいよ。なんか情けない気持ちになるから。
「なあなあ、ちーちゃん」
「うるっせーなあ。分かったよ、いま行くからちょっと待ってろ。あと、ちーちゃんはやめろ」
兄貴はゲーマーだ。昔からすごいゲーマーだ。
週末はあんこや荻野とうちでゲームをすることもあるくらい、兄貴の部屋にはゲーム機器が素晴らしくそろっている。
「おー、千尋。やっと来た」
振り返ってオレを見るなり、兄貴がコントローラーをぽいっと投げてきた。
ゲーマーのくせにこういうところは雑なんだから、おかしいよなあ。それに、オレが友達と使うと言うと、いつも気前よく貸してくれるし。
「どうしてもここがクリアできなくてさー」
「アイテムは? 変えてみた?」
「だってどうしてもショットガンで倒したいんだもん」
「ダモンじゃねえよ。かわいこぶんな、いい歳して」
弟のオレが言うのもなんだが、兄貴は結構整った顔をしていると思う。
それなのに、性格も言動もこれだもんな。もったいないにも程があるだろうよ、兄よ。



