わらって、すきっていって。



「あー。わけ分かんねー」


ベッドにどさりと倒れると、まるで身体がそのまま吸いこまれていくみたいに感じた。


あんこはあれ以上なにも言わなかった。

ちーくん、本城くんを好きだってこと、黙っててごめんね、と。涙で濡れた顔をぎこちなく笑顔に変えて、そう言っただけだった。

いや、まあ、本城を好きなのは勝手に知っていたし、それはいいんだけど。


でもやっぱり、全然、分かんねえよ。

てっきり本城もあんこを好きだと思っていたのに。

それともそれはオレの思い違いで、実は、好きじゃなかったのかなあ。でも、あの荻野も両想いだろうって言っていたしな。


自慢じゃないが、ガキのころからあんこ以外の女に興味が持てなかったオレは、恋愛経験なんかゼロに等しいわけで。

恋の駆け引きとか、そういう恋愛においての深い事情、まったく分かんねえし。情けねーけど。


好きなら付き合うでいいじゃねえかよ。

いや、それとも。もしかして、なんか、あんのかな。

なんか。本城があんこを振らなければいけなかった、決定的な理由が。



「――千尋ぉ。バイオハザードやろうぜ、千尋、なあ千尋」


突然ドアが開いた。次の瞬間、ぬっと顔をだしたまぬけ顔を見て、きょうばっかりはさすがにキレそうになった。

うるせえのがやって来た。こういう、もやもやしてるときにいちばん見たくないのが、この兄貴の顔なんだよな。