あんこは昔から、背が高くて、優しい雰囲気の男が好きだ。好きになる芸能人すらいつもそんなんばっかだし。
だから、チビで口の悪いオレは、ダメなんだよ。土俵にすら立てていない。たぶんオレは、あいつにとって“男”じゃない。
「……でも、えらいね、霧島」
「だから、さっきからなんなんだよ」
「テキトーにほかの女と遊んだりしてないじゃん。一途でピュアで、そういうところだけは評価してるよ、こう見えても」
「いちいち言い方がうぜえんだよ、おまえはさあ」
面白がってんならむかつくし、本気で言ってんなら気色悪い。荻野英梨子ってやつは、わりと本気で、とっつきにくい。
ただ、あんこのことすげー大切にしてくれているから。すげーかわいがって、守ってくれているのを知っているから、オレもこいつのそういうところだけは評価している。
「さてと。どうしよっか、あんこも戻ってこないし」
「とりあえず待っとけば……、……あれ?」
視界の端でとらえた、見覚えのあるシルエット。ひとけのない校舎から出てきたそれが、無駄に視力のいいオレには判別できる。
たぶんあれ、本城で間違いない。
……いや、でも、おかしいな。
「なんであいつ、ひとりなんだ?」
「え、なに?」
「本城だよ。あんこがいねえんだけど、なにしてんのかな、あいつ」
めでたく結ばれたんじゃねえのかよ。それに、なんなら本城も連れてこいよって、あんこに言っておいたのに。