ちーくんは、3組の下駄箱のところで待ってくれていた。
わたしたちを見つけるなり、よう、と手をあげた彼は、きょうはチャコールグレーのパーカーを着ている。たぶんおニューのやつだ。見たことのない色だもん。
「いやあ、それにしても最高だったな、荻野のいじわるな継母役。あれのおかげで演劇賞とれたんじゃねーの、3組は」
「わっかりにくい悪口をどうもありがとう、ダンスのヘタクソな霧島くん」
「う、う、うるせえな!! しょうがねえだろ!!」
ちーくんたち6組のステージはダンスで、ちょうど時間もあったので、えっちゃんとふたりで見に行ったのだけど。
びっくりするくらいちーくんのそれはぎこちなくて、ちょっとかわいかった。えっちゃんは大爆笑していた。これで3年はいじり倒せると悪い顔をしていた。
ちーくん、運動神経はいいはずなのに、おかしいな。そういうのってダンスには全然関係ないのかもしれない。
「そういえば今年の後夜祭ってなにがメインなの、リズム感のない霧島くん」
「おまえマジで許さねえからな!?」
「いいから早く教えてよ、ステップが踏めない霧島くん」
「おまっ……! ……いや、もういい、ここでキレたら大人げねえもんな、うん」
えっちゃんが「つまんないな」と笑う。それにちーくんが「なに笑ってんだよ!」と怒るので、結局全然、大人げない。
でも、安心する。こんなふたりを見ていると、すごく。いつもと変わらないふたりで、安心する。
「今年はアレだってよ、生徒会ががんばったらしくって、校庭全部ライトアップと、そのあとで恒例のバンド演奏」
「へえ! すごいね、ライトアップっていままででいちばん豪華なんじゃない? ねえ、あんこ!」
ふたりが同時に振り返る。
瞬間、瞳のなかに星が降ってきたみたいに、世界がきらきらして。なんだろう、なんだか無性にふたりのこと好きだなって、思った。



