わらって、すきっていって。


彼女の手がパンケーキに伸びた。それと同時に店員さんがカルボナーラのお皿を下げたので、美夜ちゃんは律儀にお礼を言った。


「だからね、美夜もなっちゃんのこと、守ったの」

「えっ?」

「小学5年の夏休みだったかなー。なっちゃんが信号無視のトラックにはねられそうになってね。なんだろ、全然、無意識に、身体が飛び出してたんだよねー。そんで目が覚めたら病院にいて、そのときにはもうすでに足は動かなくなってたなー」


まあるかったパンケーキが、彼女のきれいな手によって切り刻まれていく。

店内の雑踏は遠ざかって、わたしたちのテーブルには、一瞬だけ、つぶれそうなほどの静寂が落ちた。


「そのときにね、約束したんだ」


ふと、美夜ちゃんの手が止まった。


「なっちゃんが美夜のことお嫁にもらうって。責任取るって。なっちゃん、泣きながら約束してくれたの。歩けなくなったのは悲しかったけど、うれしかったよー。

だって美夜、ずっとなっちゃんのこと大好きだったもん」


のどがからからに渇いている。それなのに、目の前にある水を飲もうにも、すでに身体は動かなくなっていた。


「ねえ、小町ちゃん。

……だから、なっちゃん、とらないでね?」


なにも声が出なかった。ただ、胃に押しこんだパンケーキが逆流しそうなのを、必死に我慢した。


どんどん分からないことが増えていく。ううん。もしかしたら、分かりたくないだけなのかも。

わたしはいったい、なにを信じて、なにを疑うべきなのかな。

ねえ、本城くん。わたし、この気持ちをどうしたらいいんだろう?