パンケーキの味がしなくなった。もちゃもちゃと、口のなかで溶けていくだけの生地が気持ち悪くて、オレンジジュースで流しこんだ。
「そんな話はどうでもよくってさー。小町ちゃんって、好きなひといる?」
「――げほっ」
液体を飲みこむ寸前にそういう話題をぶっこむのはやめてほしい。
危うく気管に入りそうになったオレンジジュースをなんとか食道のほうに押し戻しはしたけれど、咳はいっこうに止まる気配がなくて、困った。
「あはは、いるんだー! どんなひと? もしかして付き合ってるの?」
「え、ええ、えええ……?」
「うなだれちゃって、小町ちゃんてばカワイイなー!」
言えるわけがないじゃないか。よりにもよって本城くんの幼なじみの、美夜ちゃんに。まさか彼のことが好きだなんて、たぶん死んでも言えないよ。
「そ、そう言う美夜ちゃんこそ」
「ん? 美夜はねえ、いるよ、好きなひと」
言うやいなや、最後の一口が、彼女のかわいらしい口に吸いこまれていった。カルボナーラはいつの間にかお皿の上から姿を消していた。
「ちなみに結婚の約束もしてるんだよー」
「えっ!? 結婚!?」
「あはは。うん、そうだよー。すごいでしょ」
結婚。結婚って。どういうことなんだろう。付き合っているひとがいて、そのひとからプロポーズされたということ?
年上のひとと付き合っているのかな。プロポーズなんてするくらいだから、うんと大人の男性なんだろうな。こんなにもかわいい美夜ちゃんならありえそうだし、もしそうだとしたら、すごく素敵だ。



