「ありがと、小町ちゃん。助かりましたー!」
「ど……ど、どういたしまして」
まだ心臓がどくどくしている。だって本当に転んじゃうかと思ったんだもん。
それなのにミヨちゃんはにっこり笑ってわたしを見上げ、はい、とドーナツを返してくれた。
「そうだ、小町ちゃん。これから時間ある?」
「え、うん。あるけど……」
「じゃあどっかでお茶しよーよ! 助けてもらったお礼に美夜がおごるから!」
ふわふわな髪をかわいく揺らして、彼女は首をかしげて笑った。その仕草がちょっと本城くんと似ていて、ふたりはやっぱり幼なじみなんだなあと実感する。
同時に、ふたりの歴史を思い知らされた気がして、ちょっとだけおかしな切なさがこみ上がった。
きっとミヨちゃんは、本城くんのこと、たくさん知っているんだろうな。わたしがちーくんのことをよく知っているのと、たぶん同じように。
「どこがいいかな? あ、でもケーキとか食べれるとこがいいなー。美夜ちょっとお腹すいてるんだよねー」
「じゃあ駅前のカフェとかどうかな? あそこのパンケーキ美味しいよね!」
「うそ! 食べたことないや! じゃあそこ行こっ」
言い終わらないうちに、ミヨちゃんは両腕で豪快に車輪をまわし始めた。見かけによらずたくましいんだなあ。こんなにもかわいらしい、お人形さんみたいな見た目をしているのに。
わたしが車椅子を押してあげると、彼女は少し驚いたようにこっちを見上げて、それからうれしそうに笑う。
「ありがと、小町ちゃん」
車椅子って結構重たいんだ。こんなものを動かしながら生活するのって、きっと、わたしが思うよりもずっと大変なんだろうな。



