◇
あんなことがあって、翌朝はどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。言葉にして思い出すのも恥ずかしい、本城くんとの、あんなこと。
それなのに、本城くんは普通で。本当に普通で。安西さんおはよう、といつもの笑顔で言われたときは、自分でもびっくりするくらいまぬけな声が出た。
もしかしてあれは夢だったんだろうか。
いや、そんなことはない。だってわたしのくちびるには、なんというか、あのときの感触がしっかりと残っているわけで。
想像よりもやわらかかった。ふに、とした。いつか漫画で読んだ効果音がそのまま当てはまる感じだった。
それでいて、あたたかくて、いいにおいがして。
最近、気付けばあのときのことを思い出している。そして、くちびるに指を押し当てては、何度も確かめる。
あれは夢じゃなかった、って。
うん。やっぱり現実だ。間違いない。だって、心臓がどきどきしているもの。
どうして本城くんはこんなにも普通なんだろう?
もしかして、彼にとってはなんでもないことなのかな。キスなんて彼には簡単にできることなのかも。
もしそうだったら……少し、悲しい。
「――みなさん、お疲れさまでしたー!!」
ふと、教室に大きな声が響いた。守田くんの声だ。
あんなことがあって、翌朝はどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。言葉にして思い出すのも恥ずかしい、本城くんとの、あんなこと。
それなのに、本城くんは普通で。本当に普通で。安西さんおはよう、といつもの笑顔で言われたときは、自分でもびっくりするくらいまぬけな声が出た。
もしかしてあれは夢だったんだろうか。
いや、そんなことはない。だってわたしのくちびるには、なんというか、あのときの感触がしっかりと残っているわけで。
想像よりもやわらかかった。ふに、とした。いつか漫画で読んだ効果音がそのまま当てはまる感じだった。
それでいて、あたたかくて、いいにおいがして。
最近、気付けばあのときのことを思い出している。そして、くちびるに指を押し当てては、何度も確かめる。
あれは夢じゃなかった、って。
うん。やっぱり現実だ。間違いない。だって、心臓がどきどきしているもの。
どうして本城くんはこんなにも普通なんだろう?
もしかして、彼にとってはなんでもないことなのかな。キスなんて彼には簡単にできることなのかも。
もしそうだったら……少し、悲しい。
「――みなさん、お疲れさまでしたー!!」
ふと、教室に大きな声が響いた。守田くんの声だ。



