わらって、すきっていって。



「――お!? あんこじゃねえか! あんこー!」


本城くんの隣に座ったまま、夢心地でぼけっとしていると、ふと元気な声に呼ばれた。

よく聴き慣れた声だ。昔よりも少し低くなったけれど、このテンションだけはずっと変わらない。すぐに分かる。

振り向くと、その声の主は顔いっぱいに笑って、わたしにぶんぶんと手を振っていた。


「あんこっ」

「ちーくん!」

「おまえも保体だったのかよー! なんだよー言えよー!」


シャツの上から紺色のパーカーを羽織っている、平均よりもちょっと背の低い男の子。そう言うと怒るから言わないけれど。

そんな彼が、わたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、豪快に笑った。

あまりに大きな声を出すもんだから、教室中の視線がいっせいにこちらに集まった。つい先週入学したばかりの1年生なんか完全に怯えてしまっている。

ちーくんは昔からこんな調子で、時々困らせられたりすることもあるのだけど、そこが彼の長所でもあるってことをわたしはちゃんと知っている。


「……って、本城もかよ!? おまえら一緒のクラスだったのか!」

「俺もびっくりした。まさか霧島(きりしま)と安西さんが知り合いだったなんて」

「んー。知り合いっつーか、大親友っつーか、幼なじみっつーか! な、あんこっ」


ちーくんこと、霧島千尋(ちひろ)くんは、知り合いというか、大親友というか、正真正銘、わたしの幼なじみだ。簡単に言えばご近所さんで、幼稚園のころからずっとこんな感じ。

彼いわく、『ずっとあんこの世話を焼いてやってる』らしい。失礼な。