近い将来、彼はどこかのご令嬢と結婚する。
例え、初めはお相手を毛嫌いしてたとしても、
きっと私に心を開いてくれたように
お相手の女性にもお優しく接するに違いない。
私をエスコートしてくれたように
そのお相手の女性にも完璧なエスコートをする筈だ。
洗練されたスーツも完璧に着こなし、
優雅に歩く姿に周りの人々は魅了される。
細長くしなやかなあの指先で作るカクテル。
本当に魔法を掛けたみたいに素敵なカクテルを作る彼。
きっと、そんな絵になる姿を横で見ているのかもしれない。
手足を組み、静かに瞼を閉じる姿。
車体の揺れを最小限に抑えながら、
ルームミラーに映る彼をこっそり見るのも楽しみだった。
あんな無防備な彼を見るのは貴重だから。
健康管理に気を遣う彼。
野菜をふんだんに使った和ご膳がお好みで
美味しそうに頬張る彼の姿が脳裏を過る。
…………私に残ったのは『欲』の塊でしかなかった。



