その夜、私は電源の落ちた携帯を握りしめ
気持ちの整理を図ろうとしていた。
特殊な携帯なのか、今時の携帯なのに
ケーブルが合わなくて充電が出来なかった。
だから、彼にお礼を言いたくても
連絡する事すら出来ないでいる。
携帯ショップや家電量販店に持って行けば
きっと充電して貰えるだろうけど、
もしかして、既にこの携帯が解約されていたら……。
そう考えたら、行動に移せなかった。
――――もう、必要とされていない
決定的な事実を受け止めたくないのかもしれない。
それくらい、私にはまだ未練があるのかも……。
けれど、『御影』という家柄と
私みたいな庶民との接点なんてある筈もなく。
親同士が知り合いだからって、
それを利用して彼に会うわけにはいかない。
それくらいの常識、私だって弁えている。
だから、頑張って整理をつけなくちゃ。
仕事だって始まるのに、これじゃあミスを犯しかねないもの。



