自宅への帰り道、
長身のスーツ姿の男性が視界に入った。
………違う。
無意識に目で追ったんだ。
大きなストライドで歩く姿が彼に似ていたから。
はあぁぁぁ……。
私、重症かも。
毎日、ほぼ24時間一緒に居て、
完全に彼の毒にやられてる。
何をするにも彼中心の生活だったから仕方ないのかもしれないが、
それにしたって、度を越してるよね?
「ただいま~」
覇気のない声が玄関に沈む。
そんな私を出迎えるように、
母親がリビングから顔を出した。
「ケーキ買って来たよ~」
「う~ん」
洗面所でうがい手洗いし、リビングへと行くと
私の好物のケーキが用意されていた。
「どこに行ってたの?」
「ふらふらと散歩」
「楽しかった?」
「まぁね」
母親は私の顏色を窺うように珈琲をテーブルに置いた。
母親と向かい合う形で座り、ケーキを頬張る。
そういえば、彼の手作りケーキ、意外と美味しかったよね。
「何?………思い出し笑い?」
「へ?」



