女将の後について、離れの特別個室へと案内される。
手入れの行き届いている日本庭園の内庭。
少しずつ色づき始めた木々を眺めながら
ゆっくりと1歩、また1歩と近づく。
―――――俺が俺でいられる残り僅かな時間。
それを噛みしめるかのように、
飛び石をしっかりと踏みしめて歩み進めた。
「失礼致します。京夜様がお着きになりました」
女将は優雅な所作で戸を開け、俺を中に誘導する。
茶室を思わせる離れは趣のある造りで
初顔合わせには相応しい場だと感じた。
俺の登場で静まり返る室内にゆっくりと足を進め、
俺は深々一礼をして挨拶をした。
「御影京夜と申します。遅くなり申し訳ありません」
「まぁ、挨拶はそのくらいにして、掛けたらどうかね?」
「………はい。では、失礼致します」
重厚感のある声。
父親と思われる人物は恰幅の良い感じの人だ。
その隣の母親と思われる人物はやや俯き加減で
貞淑な妻といった所だろうか。
そして、俺の目の前に座っている女性。
俺の結婚相手の彼女は、
柔らかに口元を閉じ、目尻を少し下げ微笑む品のある女性に見える。
美人かどうかはイマイチ分からないが、
花に例えるなら『桜』といったところだろうか。



