俺の言葉で固まる彼女。

俺……変な事、言ったか?


腑に落ちない俺は小首を傾げながらも

彼女の左腕を自分の右腕に当てた。


「履き終わるまでしっかり掴んでろ」

「……………すみません」


困惑の表情のまま俯き、ブーツのファスナーに手を掛けた。


履き終わった彼女は乱れた髪を手櫛で直す。


「お待たせしました」

「ん、行くぞ」

「……はい」


俺らはぎこちないまま、地下駐車場へと自宅を後にした。




愛車の所まで来た俺は迷わず助手席側へ回り込む。

重量感のあるドアを開け、彼女を促すと


「あっ、ありがとうございます////」

「フッ、……どう致しまして」


俺の行動を予想していなかったのだろう。

思わず驚き、はにかみながら会釈した。


そんな彼女が乗り終えたのを確認してドアを閉める。


………女性が乗り降りするには不向きだな、この車。


愛車のボディーにそっと手をかざし、

『拗ねんなよ?』と俺は心の中で呟いた。



運転席に乗り込んだ俺はエンジンを掛けようと手を伸ばすが、

掛けてしまったら、真面な会話は出来ないだろう。

エンジン音が車内にもかなり響くから。


だから、俺は……―――………。