あくる日の早朝。


結局、あれこれと考えていたら、夜が明けてしまった。


――――俺が彼女の為に出来る事は何か。



俺は軽く身支度を整え、静かに自室を後にし、

一通りの物を抱え、地下駐車場へと向かった。



愛車のドアを開けた俺は、

車内を隅々までチェックをする。


初めて乗せる訳ではないが、今日は特別な日。

汚れ1つ無いように細心の注意を心掛ける。



すると、今まで味わった事のない感情が込み上げて来た。

ワクワク? ドキドキ? ソワソワ??

ハッキリとは解らないそれらを愉しむかのように

俺は丁寧に愛車を磨き上げた。



変な匂いはしてないか?

乗り心地はどうだろうか?

出先で急に寒くなったら?

タイヤは大丈夫だろうか?

ガソリンは? オイルは??


俺はブツブツと独り言を発しながら

彼女が不快に感じぬように出来る限りの事を施した。


腕時計に視線を向けると、7時15分。

そろそろ戻らないと心配するよな。



俺は愛車のボディーに触れ、頬を綻ばす。


「今日は大事な女性(ひと)を乗せるから、よろしく頼むな」