驚愕の表情を浮かべた上に、困惑の色を滲ませている。
俺は喜んで貰いたかっただけなのに……。
俺のすぐ傍まで歩み寄った彼女は、
「私の自惚れかも知れませんが、………こ、これは、……私の為にですか?」
俺の顔色を窺いながら覗き込んで来る。
「……………否定はしない」
「ッ?!」
俺は彼女の為に『ケーキ』を作っていた。
母親から教わった……好物。
甘いモノが好きらしく、特にケーキが好きなんだとか。
実家からの帰り道に買って帰ろうとしたが、
それでは何の意味も無いと悟ったんだ。
俺の為に大事な身体に傷を負ってまで生きて来た彼女に
少しでも喜んで貰いたくて……。
けれど、料理なんてした事ないし
ましてや『ケーキ』だなんて難しい料理を
この俺が出来るとも思えなかった。
けど、だからこそ、作りたかった。
………彼女の為に。
この俺が……………。
彼女が呆れてしまう程、キッチンは無残な姿と化している。
そこら中……粉だらけで、
彼女の愛用している料理本も変わり果てた姿だ。
そんな状況にいたたまれなくなって、
「………ごめん」



