「初めて希和さんを京夜に会わせた日は、希和さんが空手の大会で優勝した翌日だったわ」
「………」
「そのお祝いも兼ねてうちへ呼んだのだけれど、彼女は少しも楽しそうじゃなかった」
「………」
「もうその頃には、希和さんは………『女の子』じゃなく、1人の……『武道家』に………なっていた」
「……ッ」
言葉を詰まらせる母親に視線を向けると、
その瞳は今にも溢れそうな涙で揺れていた。
「お母さんね、希和さんの日々の稽古は勿論だけど、大会という大会を出来る限り見守って来たの」
「へ?」
「だって、私達に出来る事なんて、それくらいしか無かったから」
頬をつたう涙をハンカチでそっと拭う母親。
その涙は………本物だと。
「この間のパーティーの時に、京夜は気付いたかしら?」
「………何を?」
「希和さんの腕と肩に………傷があるのを」
「えっ?」
パーティーの時って、
俺が無理やりドレスを着せたあの日?
「………いや、気付かなかった」
「………そう」



