「年端も行かない子供が武術を習っているというだけで心配は尽きないのに、長い年月を費やしてまでする必要があるのか、私には解らなかったわ」
「………」
「それに、希和さんは京夜と違い、女の子なのよ?」
「………」
「可愛い盛りの女の子が痛い思いを堪えながら、身体には生傷が絶えない。………そんな日々が本当に正しいのか、私には理解出来なかったの」
母親は苦痛に顔を歪めた。
本当に母親の言葉通りで、
『稽古』なんて簡単に口にするが、
決して生易しい物で無かった筈だ。
「でね?お母さん、こっそり希和さんの稽古の様子を見に行ったのよ」
「へ?」
「泣きながら無理やり習わされているのなら、反対して止めさせようと思ってね」
「…………で?」
「けれど、希和さんは違った」
「へ?」
「むしろ、楽しそうにしてたわ。向日葵のような満面の笑顔で、優成さんと拳を交えてたの」
「………」
「だからね、希和さんが止めたいと言うまで、見守ってあげよう……そう思うようになったわ」
母親は想い耽るような仕草で再びカップに口を付けた。



