「武術しか取り柄の無い父親が1人娘の将来を案じる。そして、財力があるからこそ不安と恐怖を抱え、息子の将来を案じる。……私達夫婦の想いと利害が一致した結果が今のあなた達よ」
「………」
「希和さんなら、例え、京夜の妻になったとしても拉致されるような不安を抱えなくて済むし、優成さんが手塩に掛けて育てた娘さんですもの。メンタル面も相当鍛えられている筈。御影を背負って立つ妻に相応しいと考えたのよ」
「………」
「華やかな世界だけど、実際は孤独でしょ?」
「………」
「そんな世界で戦わないとならない京夜に、お飾りの妻でなく、一緒に戦える妻が必要だと思ったから……」
――――そういう事か。
要するに、両親の愛情が結んだと言っても過言じゃない。
俺は胸の痞えが少し晴れ、再びお茶を口にした。
すると、
「でもね」
「……ん?」
「本当の事を言えば、私は反対だったのよ?」
「へ?」
母親は俺の瞳を見据えて、ほんの少し顔を歪めた。



